マンハッタンの片隅の、気さくな学際交流会

2017年8月12日 16:00

【8月】勉強会開催

2017年08月12日 16:00

【8月】勉強会を開催しました。
たくさんのご参加、ありがとうございました!

 

「虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)について」

中原 健裕さん(Mount Sinai Hospital)

近年日本人の死因として第1位は悪性腫瘍(年間約30万人)であり、心疾患は二番目の死因(年間約20万人)です。
しかし、癌はそれぞれ癌の合計であり、一番高頻度の肺がんによる死者は男女合わせて年間6万人前後です。
一方、心疾患の内訳として、心筋梗塞および虚血性心疾患による死亡者数は、年間7-8万人前後です。
今回はその虚血性心疾患、主に狭心症・心筋梗塞について、一般の方や学生にお話しするような基礎知識および実際に臨床で行われる検査や治療方法及びそれらの根拠を中心にお話ししようと思っています。

まず「循環器科が受け持つ患部はどの範囲か」という基礎の基礎から始まる医学講演でした。
心電図検査やCT検査など、聞いたことはあるけれども実態をよく知らなかった心臓の検査について、そのお値段の日米比較も交えながら知る機会を得られ、聴衆からはしばしば感嘆の声が上がりました。
虚血性心疾患の治療には、カテーテルを入れるのか薬物療法が行われるのか、そもそもカテーテルとはどういう治療法なのか(「侵襲的」という言葉を初めて知りました)、といった疑問に対して、論文のデータを用いながら一般的な答えが提示されていく。
実際の医療現場が垣間見えるご講演、臨場感がありました。


「21世紀の超高速分光」

宮田 潔志 (Columbia University, Chemistry)

分野を問わず、自然科学研究の基本はよく観察すること・詳しく見ることと言えましょう。
演者が専門としている「分光学」は"見る"という行為を究める学問とも称されますが、中でも時間分解能に特化している分野を超高速分光といいます。
20世紀後半から急速に発達した超高速レーザー技術の発展に伴い、例えば一兆分の一秒(1ピコ秒)の間に起きている物質の変化の観察等、従来では不可能だった研究が可能になっています。
今回は、発表者のセンスで身近かつ科学的に面白い当該分野のトピックをいくつか選んで紹介します。

JASS管理人、宮田による分光学入門でした。
聴衆の中にはJASS史上最年少、9歳の小学生君がいましたが、科学実験の動画や史上初の分光学的実験(馬に関する賭け)の紹介時に積極的に発言してもらえたことに、講演者は大いに喜んでいました。
時間分解能を上げることで何を観測できるようになったのか。また、現在の手法ではどこまでが限界で、何が不可能なのか。
日常では感知しえない「1ピコ秒」の世界を嬉々として語る講演者は、まるで子供のようでした。

 

ご講演ありがとうございました!