マンハッタンの片隅の、気さくな学際交流会

2017年7月7日 19:00

【7月①】勉強会開催

2017年07月07日 19:00

【7月①】勉強会を開催しました。
たくさんのご参加ありがとうございました!


特別講演:

「初代星起源連星ブラックホールからの重力波」

衣川 智弥さん(東京大学 宇宙線研究所) 

2015年9月14日、アメリカの重力波観測器advanced LIGOは世界で初めて重力波(GW150914)の直接観測に成功しました。
日本でも重力波観測器KAGRAがテスト稼働を終え、本格的な観測に向け動き出しています。
今はまさに重力波天文学の黎明期に位置しています。
重力波観測のメインターゲットはブラックホールや中性子星といったコンパクト天体からなる連星の合体です。
コンパクト連星は重力波放出により軌道が縮まり、いずれ合体します。
重力波によるエネルギー放出は弱いので、合体までのタイムスケールは数億年から宇宙年齢以上と非常に長い時間がかかります。
したがって、宇宙初期にできたコンパクト連星でも現在で合体しても不思議ではありません。
そこで私たちは宇宙最初の星である初代星に注目し、重力波源として観測できるのではないかと考えました。
その結果、初代星起源の連星は典型的に太陽の30倍程度の質量をもつ連星ブラックホールになることを示しました。
一方で従来観測されてきたX線連星内にあるブラックホール候補天体は太陽質量の10倍程度であり、そのような重いブラックホールはほとんど存在しないだろうと思われていました。
しかし、LIGOによる重力波の初検出はまさに約30太陽質量の重い連星ブラックホールの合体によるものでした。
これにより、宇宙には従来考えられていなかった重い連星ブラックホールが多く存在することが示唆されており、それらは宇宙初期にできたものかもしれません。

2015年9月14日にLIGOによって観測され、翌年2月11日に発表されたブラックホール同士の衝突が放出する重力波のエネルギー。
衝突したブラックホールは、ともに太陽質量の30倍程度でしたが、講師の衣川さんはそれより数年前に投稿した論文の中でその現象を的確に予言していました。
講演では、衝突を起こす連星ブラックホールについて、そもそも連星とはどういったものか、ブラックホールがどのようにして形成されるのかといった基礎から丁寧に語っていただきました。
JASSの常で、生物学をバックボーンとする聴衆が多い中、星の「進化」が生物学におけるそれではなく「成長と老化」と呼び得るものであろう、という知識のすり合わせが起こるといった議論が新鮮でした。

ご講演ありがとうございました!