マンハッタンの片隅の、気さくな学際交流会

2017年6月10日 16:00

【6月】 勉強会開催

2017年06月10日 16:00

【6月】勉強会を開催しました。
たくさんのご参加、ありがとうございました!


「量子異常と渦巻きがひきおこすエコな電流」

広野雄士さん Brookhaven National Laboratory

流体力学は、マクロなスケールでの物質の、特に低エネルギーにおける振る舞いを記述する普遍的な理論です。
その歴史は古く、例えばその基礎方程式の一つであるナビエ・ストークス方程式は、19世紀には確立されています。
近年になって、量子力学的な効果が新たな輸送現象を引き起こし、流体力学的な振る舞いを変える、ということが明らかになってきました。
その例として、渦や磁場に沿って、熱を発生しない(すなわち消費電力がゼロの)電流が流れるという現象があります。
この現象は、2000年代になって理論的に提唱されたもので、2014年に初めて実験的に確認され、情報処理デバイスへの応用などが議論されています。
今回の講演では、この「量子異常と渦巻きがもたらすエコな電流」について、講演者の成果も交えつつ、できるだけわかりやすく解説したいと思います。

ディープな物理学の世界を垣間見せていただきました。
「渦」とは何でしょう?
空気も水も渦を為すことは体験的にも知覚できますが、渦の正体は何なのか、渦によって何が起こるのかと突き詰めていくと、日常を超えた不思議な現象が多々見えてきます。
私たちの知る常識が覆るのは「2兆℃以上の世界」……想像を超えた内容に、あちこちで嘆息が上がるのが(本当にハッキリと)聞こえました。


「ブレイキングDNA」

山田真太郎さん(Molecular Biology Program, Memorial Sloan Kettering Cancer Center

DNAの傷はがんや老化、細胞死の原因になり有害です。
しかし意外にも私達のDNAはある程度のエラーを許容するようにできています。
これは長期的にみると生命の進化にとって重要です。
実際、生殖細胞は自らDNAの一部を傷つけることで子孫に受け継がれる遺伝子の多様性を増やします。
演者らは実験動物を用いて従来の1000倍の解像度で生殖細胞のDNAの傷を検出する方法を開発しました。
その結果、DNAの傷を巧妙に治す細胞のミクロの世界が明らかになってきました。
DNA修復の立場からみた生命の進化について、演者らの研究成果をふまえて議論できれば幸いです。

生物は進化する。DNAに多様性を持たせ、生存競争に勝ちやすい条件を整え、競争に勝った個体が種として確立する。
そうした「進化」の過程の第1段階である「DNAのエラーと多様性」についての講演でした。
「DNAは伝統である」といった比喩を交えながら、遺伝子について、細胞について、進化について、ミクロなデータからマクロな視野までカバーされ、非常にわかりやすかったです。


ご講演ありがとうございました!