マンハッタンの片隅の、気さくな学際交流会

2016年8月27日 16:00

【8月】勉強会開催

2016年08月27日 16:00

【8月】勉強会開催しました。
ご講演ならびにご参加ありがとうございました!

「進化ソフトロボット工学 -形態進化と行動創発への構成論的アプローチ-」

小川 純さん(Columbia University, Mechanical Engineering)

 ロボット工学において制御系及び構造の最適化に生物の適応進化のメカニズム(進化計算)を取り入れる試みを進化ロボット工学と呼びます.進化計算の過程で得られる多様なロボット群の制御系や構造には設計者の意図しない振る舞いをみせるものが存在し,そこから行動創発の原理原則を抽出することは工学的なブレイクスルーを生み出します. 

この勉強会では,新旧の進化ロボット工学における興味深い研究を通して最適化対象が「制御器」と「構造」である場合の進化的性質の違いをクールな動画と共に説明します.また,私の取り組んでいる進化するソフトロボットのパレート最適化とその振る舞いから身体と行動創発の原理を模索する研究を紹介します.

人工ニューラルネットワーク、ディープラーニング、遺伝的アルゴリズム。
そうしたキーワードは聞いたことがあっても、中身については意外と知らない参加者さんがほとんどだったのではないでしょうか。
実例としての動画が次々に紹介されると、ヴァーチャルリアリティ上でだんだん上手に動けるようになるロボットたちに愛着が湧き、思わず見入ってしまいました。
3Dプリンタとの併用で実機化が期待されるソフトロボットを始め、他分野とのコラボレーションでさまざまな応用・発展が望めそうだと感じました。

 

「新生児スクリーニング: 失わずにすむ子どもたちの生命を守るために。」

大石 公彦さん(Assistant Professor
Assistant Director, Medical Genetics and Pediatrics Clinical Training Programs
Department of Genetics & Genomic Sciences, Department of Pediatrics)

 産まれたばかりの新たな家族の一員を初めて我が家に迎える日は親として一生の思い出であるが、帰宅した新生児の足の裏に小さな傷跡があることに気づかれた方はいらっしゃるだろうか?これは早期治療によって救うことが可能である遺伝的疾患を早期発見するための新生児スクリーニングの採血の跡である。新生児スクリーニングは1960年代にフェニルケトン尿症で初めて導入された最も成功した公衆衛生プログラムのひとつであり、現在ニューヨーク州では拡大スクリーニング法の導入で50以上の疾患がスクリーニングされている。以前は原因不明で失われていた子どもの命を救うことを可能とするこのプログラムの社会的インパクトは計り知れない。日本でもようやく昨年度に全都道府県でスクリーニングされる対象疾患数が拡大された。今回、すべての新生児が受けているにも関わらず一般にはあまり知られていない当プログラムの医療現場を紹介する。

 ◇

新生児スクリーニングの発祥から発展、現状における問題と今後の展望まで、非常に啓蒙的なご講演をいただきました。
実際の事例を追いながらのご説明はドラマティックでした。

アメリカや日本で産まれる赤ちゃんの全員が受けるスクリーニングであるにもかかわらず、初めて知ったという参加者さんばかりだった様子。
製薬に関する薬学や化学だけでなく、スクリーニングの効率化に貢献し得る工学や物理学など、いろいろな角度から新生児スクリーニングの普及への協力ができれば、との思いをいだきました。