マンハッタンの片隅の、気さくな学際交流会

2016年3月25日 19:00

【3月②】勉強会開催

2016年03月25日 19:00

【3月②】勉強会開催しました。

藤井友香さん(NASA/Columbia University
「地球の仲間を探す」

この広い宇宙の中で、地球は奇跡的な存在なのか、それともありふれた存在なのか。
この、誰でも一度は思いを巡らせたかもしれない問いへ駒を一歩進めたのは、太陽系以外の惑星系の発見でした。約20年前に初めて太陽以外の星を周る惑星が発見されて以来、太陽系外惑星は既に2000個以上検出されており、統計的には、少なくとも恒星の数と同じくらいは惑星があると推定されています。
現在のところ、多くの場合、観測から分かることは軌道や質量などの情報に限られていますが、今後、大気や表面の組成など個々の惑星についてより詳しいことが調べられていきます。そこでは、地球と同じような特徴(例えば表面を覆う海や大陸など)を持つ惑星がどれだけあるのか知ることが、一つの目標となります。さらには、生命の痕跡をどうやって検出するのかということも、かなり活発に議論されています。それらは、地球という惑星の普遍性を知る鍵であり、その形成・進化過程についても重要なヒントを与えるでしょう。
今回は、太陽系外惑星観測の現状と今後の展望を踏まえつつ、望遠鏡のデータだけから惑星表層にどこまで迫れるかについて、お話しさせていただきます。

講演前半は「系外惑星とは何か」について一般的な観点から、後半は「地球と全く同じ惑星があったらどのように見えるか」の専門的な知見による解説をしていただきました。
「30光年先から地球を見る」というシミュレーションでは、自転する地球に光を当てて撮影し続け、反射光を利用することで、地球を構成する要素が読み解かれます。
豊富なヴィジュアル資料によって、見たことがないはずの地球の外観、近傍の宇宙の姿を少し身近に感じられる、わくわくするようなご講演でした。

 

阿部 隆之さん(Columbia University, Department of Systems Biology)
「ウイルスの侵入を感知する」

ウイルスは 、外皮糖タンパク質に自身のウイルスゲノムが包括された単純な構造を持ち、その感染を許容する細胞内でしか増殖できません。
しかしながら、ひとたび感染が許容された場合、非常に狡猾な仕組みを持って宿主細胞の防御システムを回避しつつ、病原性を示すことになります。
私達はウイルス感染症に対する防衛システムとして獲得免疫と自然免疫を有していることが広く知られています。
獲得免疫は過去の感染症の暴露の記憶に応じて、抗体産生や細胞障害性リンパ球などで速やかに感染の排除に貢献します。
一方で、自然免疫とは、マクロファージや樹状細胞等の免疫細胞などが、過去の感染の履歴に関わらず、あるいは非特異的な貪食作用を持って一過的に感染の排除に貢献するシステムとして理解されてきました。
しかしながら近年の自然免疫学の進展から、個々の病原微生物を特異的に認識し、また、獲得免疫反応の誘導に必須の役割を有することがわかってきました。
一方で、自然免疫は病原微生物の排除に貢献するだけでなく、遺伝的要因や生活習慣の破綻に伴い様々な炎症性疾患、自己免疫性疾患の要因にもなる諸刃の剣であることもわかってきました。
今回は、生体防御システムとしての自然免疫応答の貢献とその破綻による影響についてお話します。

日常生活でも頻繁に耳にする「ウィルス」について、特にC型肝炎ウィルスに関する研究成果を中心にご講演いただきました。
ウイルスの定義や近年のウイルス感染症の流行年表に始まり、非常に専門性の高い感染症治療のための実験結果まで、よどみのない解説や質疑応答は圧巻でした。
C型肝炎の治療薬の実験を巡る倫理的な問題と限界のお話は、専門外の聞き手にとって新鮮で印象深かったです。
時折挟まれるお茶目な小ネタ(STINGとか!)も素敵でした。

 

ご講演ありがとうございました!