マンハッタンの片隅の、気さくな学際交流会

2016年3月5日 16:00

【3月①】勉強会開催

2016年03月05日 16:00

【3月①】勉強会を開催しました。

小川 純 さん (Columbia University, Mechanical Engineering)
「アオノリを解く」

藻類燃料をご存知でしょうか.コンブ等から油分を抽出したもので,石油に替わる燃料として乗用車や旅客機への運用が期待されています.
これは藻類の成長速度が他の植物の100倍以上に相当し,収穫と油分抽出のサイクルが短縮できることが主な理由です.
しかし実は藻類の成長は不安定で,些細なことで葉を傷つけてしまうと枯れてしまいます.
そのため藻類燃料の供給率は養殖者の管理手腕に委ねられる部分が大きく,この状況を解決するために藻類培養の効率化を目指した研究プロジェクトが進められています.
今回は和食のお供として馴染みの深い藻類の一つである「アオノリ」の培養の効率化を対象として,アオノリの動きを定量的に解析する物理シミュレーション研究について紹介します.
アオノリの養殖では培養槽内に大量のアオノリを浮遊させて攪拌する方法が用いられていますが,成長が進んでいくと多くがもつれ,ちぎれていきます.
これらの現象は洗濯機の中で洗濯物が絡んで,時には破けてしまうことと似た原理で発生するものです.
物理シミュレーションを通して,絡みをどう定量的に扱うか,どう防ぐかという観点から,その方法について藻類培養以外への応用も交えつつ紹介します.

海藻の養殖の話かと思いきや、実は複雑系と呼ばれる分野の情報工学のプレゼンは、「綺麗な動画を観るとわくわくする」とご本人が言うとおり、美麗な動画満載で進められました。
アオノリの「絡み」を制御することで培養効率を上げられるのではないかというテーマの下、アオノリを模型化してアニメーションにし、シミュレーションを行う。
そうして得られたヴァーチャルな「絡みの定量評価」は、リアルに観察される絡みの状態と比較され、妥当性を問われます。
ヴァーチャルとリアルとの乖離をいかになくすかについて、意見や質問が飛び交いました。


樋口 聖 さん (Columbia University, Medical Center)
「体の仕組みを利用して痩せる」

肥満は糖尿病などの疾患の原因になります。
しかし、痩せることは意外に難しく、ダイエットに失敗した経験がある人も多いのではないでしょうか。
実際にこれまで、痩せるための医薬品開発も行われてきましたが、その多くは副作用などの点から失敗しています。
体の仕組みを上手く利用して、健康的に痩せることができれば、とても画期的なことです。

私が所属している研究室では、肝臓でつくられる胆汁酸に着目しています。
古くから胆汁酸は消化吸収を助けるものとして知られています。
しかし、近年では、インスリン分泌を助けたり、炎症を抑えたり、新陳代謝をあげる効果が報告され疾患への応用が期待されています。
当研究室では胆汁酸の性質を利用して、健康的に痩せる方法を研究しています。

今回、胆汁酸の性質と、肥満治療への応用の可能性についてお話させていただきます。

健康的な痩せ薬の開発が実現するかも? というキャッチーでホットなテーマに、参加者は男女を問わず興味津々。
過去の臨床のデータから「数多く存在する胆汁酸の中でも、ある特殊な胆汁酸がなくなると痩せる」ということがわかっているそうです。

まだまだ謎の多い「痩せる」メカニズムについて、マウスを使った実験の過程なども説明していただきました。

健康的に適正な体重・体格を保持できるよう、素人なりにも、自分の体の仕組みをきっちり勉強したいと思いました。

 

ご講演ありがとうございました!