マンハッタンの片隅の、気さくな学際交流会

2016年1月29日 19:00

【1月】勉強会開催

2016年01月29日 19:00

【1月】勉強会開催しました。

櫻井 祐也さん(The University of Tokyo)
「初期宇宙に潜む超巨大ブラックホールの起源に迫る」

近年の宇宙観測の進展により、128億光年以上遠方の宇宙に潜む、太陽の10億倍以上も重い超巨大ブラックホールがいくつも見つかった。
光の速さは有限であるため、128億光年彼方の光は128億年前に出された光である。
すなわちこれらの観測で見つかった超巨大ブラックホールは宇宙が10億歳未満の時代に存在することになる。
理論的にはこれほど大きなブラックホールを10億年という短い期間で形成することは難しいと考えられている。
現在この分野では、このような超巨大ブラックホールの起源に迫るべく、いくつかの形成機構が提唱されている。
その中でも有力視されているのが、超巨大ブラックホールの種として10万太陽質量程度のブラックホールを考える直接崩壊モデル(direct collapse model)である。
本セミナーでは、直接崩壊モデルを主題として、超巨大ブラックホールの起源に関する研究を紹介をする。

太陽の100万~100億倍という非常に大きな質量を持つ天体、ブラックホール。
その中でも超巨大ブラックホールと呼ばれるものの形成は、その成長時間の問題について十分に解明されていないそうです。
星が形成される際、星の中心部に向かって「物が落ち込む」現象が起こると同時に、光が放出される「フィードバック」が起こり、フィードバックによって「物が落ちる」速度が遅くなる――結果として、星の成長時間が遅くなる。
さまざまな専門分野をバックグラウンドとする質問が飛び交い、「星が潰れる」「物が落ち込む」「フィードバックが利く」といった宇宙用語のニュアンスがいろいろな角度から説明・表現されたことが印象的でした。

 

坂本 雅行 さん(Columbia University)
「脳の神経細胞の活動をみる」

私たちの脳の中の活動をリアルタイムに計測する方法として、神経細胞の電気的活動を光学シグナルに変換し、画像化(イメージング)する技術が広く用いられています。
様々なイメージング法がありますが、近年、神経細胞の膜電位変化を可視化する方法(膜電位イメージング)が注目されています。
従来の手法と比べて、より高い時空間解像度レベルを持つ本イメージング法は、様々な行動を制御する脳神経回路の仕組みの解明に応用可能であり、脳機能研究の飛躍的な進展に貢献できると注目されています。
イメージング法を用いた脳機能の神経回路レベルでの理解は、将来的にアルツハイマー病など、学習や記憶の障害の治療に役立つことが大きく期待されています。
また膜電位イメージング法は、神経科学の分野に限らず、創薬スクリーニングなど様々な研究分野への応用も可能です。
今回の発表では、膜電位イメージング法に関する最新の知見についてご紹介させていただきます。

「神経細胞に入力刺激があると、活動電位が発生し、情報が別の伝達される」ことの図(高校生物の教科書にあるような略式のもの)について、神経細胞の専門家が数名がかりで非常に丁寧に、且つ初心者向けに解説してくださった最初の時点から、とても充実していたご講演でした。
細胞に直接電極を差し込む「パッチ・クランプ法」、従来のイメージング法の代表格「カルシウム・イメージング」、及びそれらのメリットとデメリットが紹介され、次世代型のイメージング法として「膜電位イメージング」が登場。
その原理や手法やメリットに始まり、繊細な作業や確率論的な細胞の扱いの難しさ、蛍光タンパクにまつわる裏話まで、専門内外から鋭い質問が出ては議論が交わされる、アクティヴなひと時でした。

 

興味深いご講演、ありがとうございました!
(レーザーポインタの電池が尽きてしまい、ご迷惑をおかけしました。次回は改善いたします)