マンハッタンの片隅の、気さくな学際交流会

【11月】勉強会開催

2015年11月27日 19:00

【11月】勉強会を開催しました。

佐野 晃之さん(The Kimmel Center for Biology and Medicine of the Skirball Institute, New York University)
「腸管粘膜における免疫細胞の活性化機構
 –共生細菌と免疫細胞が作り出す恒常性の維持とその破綻–」

腸は解剖学上、外界と接している最大にして最も複雑な免疫器官である。
病原菌が侵入した際には、免疫系はその病原菌特異的に強く活性化され、生体を感染から防いでいる。
一方で、人の腸内には100兆個を超える共生細菌が生息しており、病原菌の感染の有無にかかわらず、腸管免疫細胞は腸管に常在する共生細菌により構築される。
近年ではこの共生細菌の異常が、自己免疫疾患、精神疾患、悪性腫瘍などの様々な疾患に関与していることが報告されてきた。
しかしながら、腸管粘膜における免疫系がどのように構築され活性化されるかは未だ不明な点が多い。
本講演ではヘルパーT細胞の一種であるTh17 細胞の分化を誘導するユニークな共生細菌「SFB」に着目し、SFBによるTh17細胞の分化及びその活性化の分子機構について解説し、いかにして病原性を獲得し、疾患に関与するかの議論を深めたい。

 

想像を絶するほど複雑なシステムが構築されている腸。非常に精緻で丁寧な実験と考察により、腸を舞台に生じる超複雑な免疫機構の一端を明らかにした研究をご紹介いただきました。
大変こみいった内容を、丁寧かつユーモアに富んだスライドで教えていただき、専門内外から多くの質疑が交わされました。専門外の参加者にとってもわかりやすく、非常に盛り上がる発表でした。

 

宮田 潔志(Department of Chemistry, Columbia University)
「究極の太陽電池材料!?
 - 有機無機ハイブリッドペロブスカイト -」

太陽光発電は持続可能社会の達成には欠かせない技術であり、高効率化・低コスト化を目指してますます盛んに研究されている。
近年、日本発の材料でもある有機無機ハイブリッドペロブスカイトと呼ばれる材料群が注目を浴びており、驚くべきことに2013年に報告されてからわずか3年の間に光電変換効率が20%を越している。
しかし、このシステムが高効率を達成できる微視的な機構は明らかになっていない。
本講演では、太陽光発電の基礎を概観しながら最新の分光学的な実験成果も踏まえ、原理解明に対する実験的な試みと仮説を紹介する。

 

佐野さんの医学生理学の話から一転、物理化学の内容。"良い"太陽電池とは何なのか、といった問いから始まり、なぜ有機無ハイブリッドペロブスカイト材料が良い材料なのか、その微視的な機構解明に迫る最新の結果を紹介させていただきました。

太陽電池が比較的身近だったこともあって、多くの方から質問をいただき、総じて活発な発表にすることができたと思います。少なくとも発表者はとても楽しんで発表をさせていただきました!

 
興味深いご講演、ありがとうございました!